本作はデュマ・フィス『椿姫』をモチーフにしたフランソワーズ・サガン『棘』に発想を得て、
夢と現実、幻想と社会を選択せざるを得なかった男と幻想に生き続ける女、
そしてその幻想に魅せられていく男を描きます。
『椿姫』は作者のデュマ・フィスの体験に基づいた小説で1848年に発表されました。
発売当時、まさに現代を舞台とした一種の私小説でした。
1年後には作者の手によって戯曲化、1850年に舞台初演が行われ、
1852年にパリで上演を見たヴェルディによって1853年にオペラ化されました。
(ただしオペラは『La Traviata(道を踏み外した女)』と題名を変えています)
このオペラは世界中で最も上演されるオペラの一つで、
『椿姫』はオペラによって知られているといっても過言ではありません。
主人公のマルグリット・ゴーティエ、オペラではヴィオレッタ・ヴァレリーは、
伝説的な名女優サラ・ベルナールや希代の歌姫マリア・カラスの当たり役とも知られ、
愛に目覚めた主人公が、自らの身の上のために愛する男と結ばれずに肺結核で亡くなっていく物語です。
『プライヴェート・リハーサル』の時代は1968, 69年。
女優リュシエンヌと弟子入りしたポールは、『椿姫』の設定を借りながら、
「どうしてもこれを言わせて欲しい、世界中の人に伝えたい!」と思える言葉を探して、
二人だけの言葉、物語を作っていくのです。
本作は私にとっての演劇宣言ような、舞台で舞台を物語ることの意味を問うた作品です。
最後にポールが語るモノローグをどうしても伝えたいから、語りたいから、この作品を作りました。
『プライヴェート・リハーサル』が100年後にも上演され得る
”新しい古典作品”となるための第一歩をここに記したいと思います。
作・演出 田尾下 哲
作
田尾下 哲
修辞・ドラマトゥルク
長屋 晃一
2015年7月
日暮里d-倉庫
風花 舞 山﨑 将平 岩崎 雄大